先日、ソウルオリンピック銅メダリストの田中ウルヴェ京さんの講演に誘われて行ってきた。京さんはオリンピックの時に小谷美佳子さんとデュエットを組んで前回のオリンピックから正式種目になったシンクロで銅メダルを獲得した人。
講演のタイトルは「メンタル対策で差がつく企業力」
15歳からシンクロナイズドスイミングの世界で活躍してきた京さんは11年前にメンタルトレーナーの会社を興し、最初は主にスポーツ選手向けのメンタルトレーナーの業務を行ってきた。今は様々な分野、特にビジネス社会向けのトレーニングを行うことが多いという。
なぜメンタル対策なのか?・・・それは実力を出すため!
例えば人生の節目を迎えた人や戦力外通告を受けた人にも役立つ。人生を前向きに生きたい、こうありたいという目的のある人にメンタル対策を施すのは楽である。問題はそうでない人に対するメンタルトレーニングは難しい。
スポーツ選手は自分自身の目標、対して企業戦士の目標は?会社の目標や組織の目標と自分の目標とのすりあわせが難しい。
目標がない人にはどう対処するか?
それには、「自分を知ること」そこから自己目標を知ることができるようになる。
企業人には自分を知りたくないという人がいる。つまり企業の中で会社の目標の中で自己目標を沿わせ、自己実現してゆくことができない、したくないという人たちがいる。
大学4年で銅メダルをもらった京さんは小さい頃から歴史に残る人物になりたと思う。小さい頃から死ぬのが怖いという感情にとらわれ、寝ることもできないほどに悶々とすることがあった。そういう不安感を払拭する考えとして出てきた結論は歴史に残る人物になるということ。メダリストになればその後の人生が何とかなると思った。しかし成功したと思った時点でその後の目標がなくなる。なにか勘違いをしているということが後になってわかる。
「自分を知らない」というストレス。
間違った自分像・・・認知行動療法ではエゴ(〜であるべき)、自分はこう見られるべき、自分はこう扱われるべき。しかし社会は自分の思う自分像を与えてくれない。したがって自分を悲劇のヒロインにする。自分なんかどうせ〜・・・という考えに陥る。
自分にはストレスなんかない。そんな自分ではないという相対評価を経て。マイナススパイラルに陥る。
最後は、ネガティブな達観に至る。「別に・・・」「こんな自分でいい」「それで当然だ」という感じ!
京さんはマイナススパイラルに陥っている自分を知らなかった。
そんな時に、新聞の特集で「あの人は今」というタイトルの取材依頼に愕然とし返事の声がうわずってしまい声にならない。電話を切った後に泣いてしまった。例えば自分が失敗したときに人のせいにしたりすることや、自分の現状を人のせいにするというような状況に陥っていた。そんな心理状態ではよいことが起こったときにも喜ぶことができなくなる。
強烈なストレス!
その後アメリカに留学。27歳の大学院の時に教授にライフラインを書かされた。それは縦軸に幸福感、横軸が年齢のグラフ。京さんはすべてプラス側だったが、本来はゼロを中心に推移すべきグラフだ。
このグラフの意味は何をやり遂げたではなく、どう感じたかという幸福度をチェックする意味。一流の競技家には過去の成功によって今現在の自分自身に自身がないという人が多い。
その後のトレーニングで感情日記を書かされるようになった。それは日々の出来事とその時の感情を記してゆくものだ。京さんはこれまで出来事に対して動じる自分を他の人に見せることができなかったが、その対策でもあった。感情を出すのはストレス対策にもなる。要は出来事が自分を落ち込ませるのではなく、そのことによって勝手に自分が落ち込むということを冷静に考えさせることができるようにするためのトレーニングでもある。
その「勝手に自分が思う」ということがその人の考え方の傾向を決める「考え方のフィルター」だということなのだ。その人の考え方の癖とも言える。
大学院の先生は日々の感情トレーニングを通して、京さんに自分の感情を素直に出すことの大事さを教えた。人は感情の動物だ。その感情に向き合いコントロールすることが大事だ。いらいらするのはなぜか?嫉妬するのはなぜか?先生は京さんが小谷美佳子さんに対して嫉妬を抱いていたことを自ら気づいたことを褒めた。先生自身も70歳を過ぎてもたくさん嫉妬することがある、と説明した。
そしてそういう自分に気づくことが大切で、気づけば自分を変えられると説いた。
最後に、京さんは三つの格言を紹介!
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1)Success is doing your own thing for the benefit of others「成功とは他人のために自分のやりたいことをやることだ」
2)リーダーはマトリョーシカの(一番小さな)人形になれ。
3)普通とか一般とか常識とかを考えるな。
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